原発の再稼働は、直ちに中止すべきである
アメリカのヤンキー原子力発電所は、アメリカ電力大手エンタジー社が所有する原子力発電所であり、福島第一原発1号機と同じ沸騰水型で1972年発電を開始した。
2012年アメリカ原子力規制委員会は、この発電所の2032年まで20年間の運転延長を決めた。
原発の運転延長に反対する住民は、この運動の中で原発反対の州知事を僅差で当選させ、州としては運転の延長は認めなかった。
州知事は再生可能エネルギー(太陽光発電や風力発電)の推進を図り、原発の運転延長に反対した。
しかし、電力大手エンタジー社は連邦裁判所に控訴し、連邦裁判所の判決は州には原発の運転延長の当否を決定する権限はなく、原子力規制委員会にその権限はあるとして、住民側の敗訴が確定した。
住民は原子力規制委員会の聴聞会で、原発の安全性について徹底的に問いただす中で、原子力規制委員会は運転延長の為に、安全を確保するための設備改善を決め、これを各原子力発電所会社に求めた。
電力大手エンタジー社は突然ヤンキー原子力発電所の廃止を決定した。その理由は下記の内容である。
1、シェルガス開発による発電の競争と比較してコスト高
2、安全性信頼性の向上に多額の費用がかかる
この廃炉の主役は近隣住民の原発廃止の運動の力であり、福島第一原発事故もこの廃炉の大きな要因となった。
しかし、廃炉は決定したものの、今後にも多大な負の遺産が生じることとなった。先ず廃炉にかかる予算が不十分であり、その予算の約半額しか計上されていないという現状がある。又最終処分場が決められていないために、高濃度の放射能を含む物質が発電所跡地に保管されるという問題が発生することである。
この高濃度の放射性物質の保管は万年単位という長期のものであり、後世にその責任が転嫁されるということになる。
一万年後、人類はどうなるのかは全く不明である。地球は氷河期を迎え人類は滅亡するかもしれない。その前に温暖化が進行し海水面の上昇により、陸地は狭まり各原子力発電所は海中に歿することも想定される。
核のゴミである高濃度放射性物質はどうなるのか、その保管方法も最終処分場も確定することが出来ない現状は、アメリカも日本も全く同じである。
このような状況の中でも、安倍政権は、原子力発電所を再稼働させようとしている。これは、最終処分方法もまた処分地も決まらないにもかかわらず、高濃度放射能物質を再生産するという悪循環を推し進めることに他ならない。このことは日本国民に対する犯罪行為にも等しい。また他国に原発を輸出することは、世界中に危険を輸出するということにつながらざるを得ない。
原子力発電コストは安いというが、この高濃度放射性物質の処理費や保管費、最終処分等の費用、あるいは廃炉費用は全く含まれていないものであり、この金額は膨大なものとなるのである。決して安いものではなく非常に高いものとなる。
福井地裁は大飯原発3・4号機の運転差し止めを求めた判決で、その差し止めを認める判決を下した。大きな前進である。(2014年5月21日)
この判決では、人格権は、「憲法上の権利であり(13条、25条)、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、我が国の法制下においては、これを超える価値を、他に見出すことはできない。」とし、「原子力発電所の稼動は、法的には、電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由(憲法22条1項)に属するものであって、憲法上は、人格権の中核部分よりも、劣位に置かれるべきものである。」としている。
この判決について、安倍政権は正面から受け止めるべきである。
原発の持っている危険性とそこから生ずる放射性廃棄物のもつ非経済性と人類に対する危険性を重視し、原発の再稼働を禁止し、自然再生エネルギーに方向を転換し、その中から新たな技術開発を促進させ、産業の新たな発展に寄与していくことが日本の再生となることを提起したい。