先行解決した1都2県と神奈川の特徴

1 神奈川の解決内容の評価

 ① 技能職の一次提訴者全員が指導技能員となれた。
 ② 技能職(女性)においては男女差別裁判で訴状請求した通りの是正を勝ち取った。
 ③ 01年8月までの自主交渉で提訴者全員の昇格を勝ち取った。
 ④ 最終的に執務職は全員が総合職になった。
 ⑤ 提訴外者の8割の格付け是正を勝ち取った。
 ⑥ 中労委では中村の格付け是正の総合職8級を勝ち取った。
 ⑦ 解決金は一定の金額が取れた。
 ⑧ 退職金・年金ポイントの是正をさせた。

2 日立争議の解決の歴史

(1)過去の日立争議の解決状況との比較(日立本体争議)

日立製作所争議一覧

   争 議     発生~終了時   人数    争議内容           備考・解決内容
1 茨城解雇争議  1959/ 5~1979/12  7  出張拒否・臨時工解雇         金銭解決
2 草野解雇争議  1965/ 5~1980/12  1  配転拒否・解雇           金銭解決
3 佐藤解雇争議  1965/ 8~1973/ 8 1  転属・解雇             原職復帰
4 向坂解雇争議  1965/ 9~1982/12  1  活動家(臨時工)・解雇        金銭解決
5 矢吹解雇争議  1965/10~1981/ 5  1  拉致監禁をしたとして解雇      金銭解決
6 岡崎解雇争議  1966/ 8~1967/12  1  不当逮捕・解雇
7 田中解雇争議  1967/10~2000/ 9  1  残業拒否・解雇           金銭解決
8 中研差別争議  1986/12~2000/ 9 12  賃金・昇格差別           差別是正
9 横浜佐藤争議  1990/ 8~2002/ 7 1  サービス残業告発による人権侵害   原状回復
10 男女差別争議  1992/ 3~2000/ 9  5  男女差別(東京原告)         差別是正
11 茨城差別争議  1992/10~2000/ 9 17  賃金・昇格差別           差別是正
12 愛知差別争議  1992/10~2000/ 9  3  賃金・昇格差別           差別是正
13 東京差別争議  1992/10~2000/ 9  2  賃金・昇格差別           差別是正
14 男女差別争議  1992/ 3~2002/ 7  4  男女差別(神奈川原告)       差別是正
15 神奈川差別争議 1992/10~2002/ 7  5  賃金・昇格差別          差別是正

・日立争議の傾向

 ① 上記のように1986年の中央研究所の差別事件以降の争議は全て差別事件で、それ以前は全て解雇争議でした。解雇争議で佐藤事件は最高裁で勝利し、原職復帰しましたが、その他は長期争議となり高裁段階で金銭和解をして終結しています。このように会社は裁判で敗訴が確定しない限り、職場に復帰させることはしない姿勢をとっています。
 ② 今回の日立差別争議でも労働委員会で負け続けていても最後まで「差別はしていない」という態度に終始しました。
 ③ しかし、各地の労働委員会から断罪され、神奈川地労委命令は同期同学歴の中位者の格付けを命じ、結果はそこまで到達できませんでしたが、解決後、仕事上の差別はあまりみられなくなり、職場での存在感も出てきています。

(2)先行解決した1都2県と神奈川の特徴

 ① 交渉の形態として1都2県は中労委交渉で進め、解決金や退職金などの重要な局面で中労委裁定を出させ、それをもとに決めていきました。
  それに対して神奈川は中労委の入らない当事者同士の話し合いによる自主交渉を主体として交渉を進め、会社から直接回答を出させました。

 ② 1都2県は格付け交渉で、格付けが上がらない人が出ることを認めた上で、最初に昇格の枠組みを決め、原告個々人をどこに格付けるかは会社に任せました。
  神奈川は全員の格付けを上げることを主張し、原告一人一人につき回答を出させ、それぞれを上げる交渉をし、全員の昇格を勝ちとりました。

 ③ 解決を決断するときは、1都2県は個々の格付けを会社に任せたため、原告に見せると混乱をきたすとし、原告それぞれには格付けを教えないまま、会社に受け入れの回答をしました。
  神奈川は交渉の都度団全員に知らせ、議論しました。自主交渉の時点で全員昇格したものの不満とする人がいたため、中労委交渉に切り替え、不満だった団員の要求も勝ち取って、全員納得のうえ解決しました。

1都2県と比べての前進面
  ① 自主交渉の時点(01年8月)で原告全員の昇格を勝ちとった(1都2県は上がらない人がいた)。
  ② 事務技術系は全員執務職から総合職に昇格した。
  ③ 技能系一次原告全員指導技能員を勝ちとった。
  ④ 男女差別原告の技能職全員(2人)が訴状で請求通りの格付けを勝ちとった(東京原告の場合は3人中1人)。
  ⑤ 職務等級はいじらないで基本給を最大限あげた。1都2県は職務等級を上げた人もあり、結果、基本給の是正額が少なくなった。
  ⑥ 総合職の2人が頭切り対象だったがやめさせ、是正金額の7万円を満額勝ちとった。
  ⑦ 組合との労使協定で53才で資格給が1万円あがる事になっており、該当者4名につき6月ペースアップでこの1万円を上げさせ、その上、7月に是正金額を満額上げさせた。
  ⑧ 提訴外者の8割の格付け是正を勝ち取った(1都2県は5割の格付け是正)。

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